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【書評】 八代嘉美『増補 iPS細胞 世紀の発見が医療を変える』平凡社新書

iPS細胞とは、induced pluripotent stem cells(人工多能性細胞)の略であり、「大人の身体からとってきた細胞」を出発点としながら、私たちの身体を構成するさまざまな種類の細胞をつくり出すことができる夢のような細胞のことである。技術が確立すれば、肝臓病の患者からつくったiPS細胞から健康な肝臓をつくって移植する、病気により失明した患者の網膜を再生させる等々、革命的な医療が可能になる。

そもそもヒトの60兆個もの細胞は、もともと一つの卵細胞からできている。卵細胞はあらゆる細胞になることのできる「万能細胞」だが、成長が進むにつれ「分化」(特殊化)し、他の細胞へと変化できる能力を失っていく。これは生物学的には「メチル化」と呼ばれる現象であり、不必要な部分に「メチル基」という分子がくっつくことによりカギがかかり、目的外の細胞の設計図がコピーされることをストップすることにより、他の細胞がつくられないようになる。すなわち、細胞は分化によってどんどん可能性を狭められ、それが最終的に一つの細胞に決まるまで続くということである。そして、一旦分化した細胞は、もはや分化する前の段階には戻れず、別の細胞になることはできない、はずだった。

しかし、この常識を覆したのがES細胞、そしてそれに続くiPS細胞だった。ES細胞はヒトの胚から取り出した細胞のことで、これを培養することにより様々な細胞をつくり出すことができたが、胚を使うことは将来生まれる可能性があった命を失わせることにつながるため、倫理的な問題があった。この問題点を克服したのが、ノーベル賞を受賞した山中伸弥・京大教授の作ったiPS細胞で、これはヒトの体細胞に「山中ファクター」と呼ばれる4つの遺伝子を投入することにより、細胞を初期化(リセット)し、多能性を持つ細胞を得るものである。

再生医療への応用に期待が高まっているが、細胞が再び初期化することやガン化することへの懸念があり、実用化への道は平坦ではない。この本は、こうした最先端の話題も解説しつつ、まったく医療の知識がない人にもわかるよう、細胞の成り立ちから研究の意義・応用の可能性までを平易に説明する優れた入門書である。生物学の知識が全くない人でも内容が理解できるように書かれているが、高校で生物を履修したことのある人なら、「オーガナイザー」や「シュペーマン」といった単語などを見て、「ああ、あれが最先端の医学につながっているのか」などと思い出しながら楽しく読めるだろう。



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