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【書評】小此木啓吾『シゾイド人間―内なる母子関係をさぐる』ちくま学芸文庫

小此木氏の本は、対象喪失以来だったろうか?氏はフロイト派という印象がかなり強いのだが、本著を読んで感じたところによれば、「フロイトを機軸として解釈していくものの、フロイトに拘泥はせずに、クライン学派、対象関係学派(フェアバーン、ウィニコット)などの理論も広く取り入れている」といった具合である。本著では、シゾイド人間と銘打たれているものの、前半部はウィニコットを機軸とした対象関係論が展開されている。その他、クラインやマーラーなども触れられているが、個人的にはクラインとマーラーの理論はそっくりだと言えなくもない。

クラインにおいては、よい対象と悪い対象とが当初はばらばらであるがそれが次第に統合されていく(途上で行きつ戻りつしながらも。妄想・分裂ポジッション→よくうつポジッション)というプロセスを経るのだが、マーラーにおいても乳幼児は分離(母からの)・個体化(独立)していくが、やがて「再接近」してしまう、つまり、近づいたり離れたりして不安定になってしまいながらも再度統合されていくというプロセスを経るわけだけれども、両者共に見出しているもの自体は非常に近しく感じるのである。基本的に両者とも母親との関係において成立しうる理論であり、「悪い対象」という言葉があるだけにクラインの方がややラディカルではあるものの、両者共に「対象関係」が取り入れられているように思われてならない。無論、マーラーの理論は「自我心理学」を機軸とする立場であるために、自我に形成において母親から離れて独自の自我が形成されるという考え方ではあるのだけれども、母親から離れるという時点でこれは「対象関係」を含みうるだろう。自我心理学の金字塔とでも呼ぶべきアンナフロイトはクラインを毛嫌いしていたようだが、自我を機軸として関係性を見るか、関係性を機軸として自我を捉えるかの違い程度しか両者には差異がないように思われる(その差異が大きいのかもしれないが)。また、ウィニコットにおいては二種類の幻想が述べられている。一つは、フロイトが言う「夢の補償」としての幻想でありこの幻想は覚めることがないが、もう一つの幻想は「錯覚」であり、それが外的な対象に対して抱かれる幻想であるためにそれは必ず冷めてしまう(脱錯覚)という性格を持ちうる。要するに、自分の中にある理想を投影してあたかも恋人が自分の理想相手であるかのように感じるのだけれども、結婚して一緒に生活してみればその幻想が嫌でも冷めざるを得ないというわけである。また、ウィニコットの理論としてはそのほか、グッドイナフマザー(ほどよい母親)というものや、移行対象・移行領域などどいったものがある。これは分離・個体化の過程における中間領域としての性質を持ちうるものである。そのほか、古沢平作氏のあじゃりコンプレックスであろうか?これはいわゆる母への恨み辛みとその後に与えられる赦しとを含んだ理論であり、日本人における母親との関係性を日本人の側から捉えたものとして小此木は評価している。他方で、甘え理論を日本人における母親との関係性を西洋個人主義の枠から捉えているとして批判している。

前半部の要約が長くなりすぎたが、シゾイド人間としては分裂的にその場しのぎで生きている人間を指している。つまり、切り替えが大事であり、深入りしないというパーソナリティなのだけれも、これは分裂気質とは次元が異なるらしい。分裂気質や分裂病的性格などは、本人の生来的な傾向であるが、シゾイド人間というのは時代として要請されている人格であり、例えば、「誰か一人に拘泥している男は女々しくて気持ち悪い」と言われてしまうのがそのよい例だと思われる。とはいえ、それはある意味で現実世界での話であり、ファンタジックな世界ではその拘泥を認めたりもするのだが、これもやはりシゾイド的性向によるものなのだろう。ちなみに小此木氏の面白い点は、シゾイド人間を批判せずに、むしろシゾイドらしくあろうとすることが今の時代では必要なのかもしれないと述べているということである。少なくとも、そういう要領のよさが得られれば今の時代を生きやすくなるだろうということである。その反面で、小此木氏はそういう短絡的すぎるところには走らずに、もう少しある意味超越的にでも、我々の本来のあり方を模索しようというものである。そして、小此木氏は「ほどほどにあろう」とでも言うのだろう。小此木氏のある意味で中立でありながらも、よりより路を模索していこうとする姿勢には好感が持てるものの、なぜだか社会論になった時点でなにかが色あせるように感じるのも事実。個人を普遍化するよりは、個人の中にある普遍性、そしてその普遍性を通して見える個性に触れるほうがよほど個人的には愉しいのかもしれない。



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