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【書評】岸田秀『対話 起源論』新書館

私は、最近、岸田秀の本のなかの、とくに社会や歴史についての発言に強い関心をもっている。もともと精神分析や深層心理学が好きな上に、彼の「唯幻論」が、仏教の思想とかなり通じるものがあるからである。つまり、人間は本能が壊れて自然との直接的な関係をもてなくなったがゆえに幻想を介在させて世界に対応するほかなくなった。それが、「自己」、「言語」、「文化」の起源であるという。

人間が見る世界と自己が幻想に過ぎないとする点は、仏教が、凡夫の迷いの世界を迷妄であり、幻影であるとするのに通じる。ただ岸田は、その幻想から目覚める(つまり覚りを得る)ことの可能性を認めていないが。その点を除いては、彼の「唯幻論」にかなりの共感を抱いている。

この本は、「父の起源」「歴史の起源」「国家の起源」「近代の起源」「幻想の起源」について、それぞれの霊長類学者や歴史家との間で対話している。私はとくに「幻想の起源」(三浦雅士との対話)が非常に面白かった。唯幻論が出て20年以上を経て、学問の状況もかなり変化した。その変化を踏まえて唯幻論を再度検証しようという対話である。

とくにチョムスキーの言語理論との比較検討が面白い。言語能力は人間に先天的なものであるとう理論と、本能が壊れたから言語を作ったという理論は、両立しうるのか、どうかという問題である。実際には、チョムスキーが言いたいのは、何語であれ、人間には言語を習得する能力があり、そこが類人猿とはちがうということである。だから、これは、社会言語学や岸田の理論の矛盾はしない。むしろ、言語が先か本能が壊れるのが先かという問題にからんだ議論の方が面白そうだ。       

◆本能の崩壊と言語の獲得
岸田は、人間の本能が壊れたのが先で、壊れたから必要に迫られて言語能力が開発されたと考えている。しかし、どうして本能が壊れたのかを説明するのは難しいと岸田自身がいう。チョムスキーは、新人(クロマニョン人)の段階で普遍文法が、突発的に獲得されたと思っていたようだ。しかし、それがどうしてかについては、かなり神秘的な理由も想定していたらしい。

丸山圭三郎は、脳が異常発達して言語が発生し、その結果、本能が壊れたとする。しかし、ではなぜ脳が異常発達したのか、という困難な問題はやはり残る。 

◆どちらが先とも言えない?
旧人(ネアンデルタール人)と新人との間には、言語能力に決定的な差があったとする説が多いらしい。とすれば、なぜクロマニョン人はそのように高い言語能力を持ったのか。本能の崩壊が先か、言語能力の獲得が先か。おそらくこれは、どちらが先とは結論づけられない問題だろう。

ただ、この問題の根底には、なぜ生命は進化するのかという進化論の問題が横たわっている。岸田のように本能が壊れたから必要に迫られてとするのは、何かしらダーウィン的な進化論をにおわせる議論のように思われる。なぜ脳は本能を壊すほどに異常発達したのか。もしかしたらそこに「突然変異」以上の何らかの意味があるのではないか。進化そものもを、ダーウィン的な見方から自由に見直すなら、全く別の説明の方法もあるだろう。

◆対話の面白さ
この本全体としては、父、国家、歴史、近代等についての「唯幻論」の大胆な仮説を、それぞれの専門家の意見と突き合わせて検証するという構成をとっており、すこぶる刺激的だ。その意味では、岸田が書いた本と同時に、いやそれ以上にこのような対話本の方が、面白いかもしれない。



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