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【書評】須藤 訓任 門脇 健 『フロイト全集〈12〉1912‐1913年―トーテムとタブー』岩波書店

表題の「トーテムとタブー」は部族や禁忌に絡む、どちらかといえばユングの扱う内容だと思っていたが、巻末の須藤訓任(すどう・のりひで)氏の「解題」を読み納得しました。
フロイトは密な書簡のやり取りを行い濃密な交流を持っていた、いや、濃密な関係を築くために書簡のやり取りをしていたのかもしれませんが、ともかく。
ユングとの関係の破綻の兆候が、ユング→フロイトへの書簡の「書き間違え」に現れるとのことでした。
極端な書き違えを文中より抜粋する。
「私は教え子たちに、精神分析が科学的-方法的な作業であって、単なる直観的な判じ事でないことをわかってもらうのに、悪戦苦闘しなければならない始末です」←この「教え子たちに(ihnen)」を「あなたに(Ihnen)」と間違える。
フロイトの理論を適用すれば、恩師フロイトに対する敵愾心かなにかが根底にあり、抑制しようとする理性が働いているとみなすところだが――
あくまでフロイトはユーモアをもって応対する。
やがてユングは憤懣もぶちまける結果となるのだが――あくまで読む限りだがフロイトの精神的優位性は揺るがない。まあ一ヶ月返事が来なかったくらいでネチネチ執拗に書くフロイトの姿勢もどうかと思うが。お互い妻子持ちで多忙なドクターなのだし。しかし、当時の彼らでなければその心情は分からない。
解題を踏まえ「トーテムとタブー」を読むと、先入観も相まってか弟子のお得意分野を扱ってやり返すフロイトの反骨心が感じられる。何度となく登場する「敵愾心」なる単語にも。
神経症の症状と、人間共同体から特定の人間を取り除く「禁忌」と「厳罰」。それはそれだけ、禁忌を犯したい欲動が人間の内面に介在するからでは、と私も考える。
収録作のなかでも他に「性愛生活が誰からも貶められることについて」や「自慰についての討論のための緒言・閉会の辞」が特に面白かった。
前者の一文を抜粋する。
「男性は性的活動をするときにはほとんどいつも、女性への敬意ゆえに自由が利かないと感じており、その十全たる性能力(ポテンツ)を展開できるのは、貶められた性的対象を相手とするときに限られるのである。」
なるほどと膝を叩いた。



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