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【書評】村上春樹 柴田元幸『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』文春新書

"the Catcher in the Rye" 40年振りの新訳について、訳者 村上春樹と柴田元幸が語り尽くす。

出版に先立って行なわれた白水社主催の対談、本書出版のために行なわれた文春主催の対談、訳書に(契約上の問題で)未掲載となった幻の訳者解説、柴田元幸のエッセイ風解説の 4編からなる。圧倒的に面白いのは、やはり出版前夜の興奮を湛える白水社の対談。"the Catcher in the Rye" を訳すためには、物語そのものではなく、スタイル(文体)を翻訳する必要があった、そしてこの40年の日本語の変化や、日本文化のアメリカ化が、(1964年の野崎訳と比較して)それを比較的直截的にしているという話は興味深い。それに比べると文春の対談は凡庸。

訳者解説は(意図して)大半がサリンジャーの略歴で、作品自体の解説はあまりしていない。その微かな作品解説の中で、"the Catcher in the Rye" を「構造的に完成された(あるいはそれを意図して書かれた)小説ではない」というのはその通りで、構造に着目して読み込む類の小説ではないだろう。しかし、その魅力を同世代の共感に求めたのは短絡的に過ぎる。個人的には、サリンジャーという「大人」が 16才のホールデンという adolescence を克明に描き切っているところが、この小説の興味深いところだ。それは大人になってから思い描く adolescence の勢いであり、未熟さであり、16才当初のそれそのものではないところに逆に魅力がある。



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