スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【書評】多根清史『ガンダムと日本人』文春新書

 本書は,放送30年後も根強い人気を誇る『機動戦士ガンダム』の背景を「日本という国の歩み」になぞらえ,戦後の日本の歩みと現代日本の置かれた状況をガンダムを通じて考察しようとした論考である。
 筆者によると,戦時~戦後の日本が辿ってきた歩みは,ガンダムの中のドラマと奇妙な一致を見せているという。具体的に第1章では,地球連邦軍とジオン公国の存在意義について,従来,ジオン軍はナチス・ドイツ軍に,連邦軍を英米の連合軍に例えられてきたそうだが,筆者は,ジオンのイデオロギーである「スペースノイドの解放」が「大東亜共栄圏」のスローガンに似ているとして,戦時期の日本こそがジオンのモデルではないかと説く。同様に,連邦軍に対しては,莫大な富をほしいままに運営できる官僚制が敷かれていたことで,戦後の日本におもかげを感じ取っている。
 次章では,軍用機とモビルスーツの量産構造に着目し,部品の標準化や効率の良い生産性が欠如していた点で,零戦をザクに例えるとともに,米軍の機体「ムスタング」を,長い航続距離と高速性に加え,機能性,整備のしやすさを併せ持った「成功した量産機」として,連邦軍を勝利に導いたジムと同等ではないかと言う。さらに,戦後の造船業の生産管理や自動車産業の量産方式が戦艦大和の製造工法を継承している点を重視して,大和とガンダムの共通性を主張している。
 最終章では,「壊し屋」という側面から,小沢一郎が「赤い彗星」シャア・アズナブルではないかと述べ,血筋の良さと環境に恵まれながら,その恩を仇で返すような「裏切り」を行い,旧体制の破壊に全力を注いだ経歴を観察している。
 なるほど,個々のエピソードに対しては,思わず頷きたくなる一面もある。たとえば,これまでのキシリアは,ジオングの両足の不要性を分からなかった「偉い人」と解釈されてきた。しかし,筆者は,キシリアがあらゆる戦線へと展開する「量産」という基準に照らした上で,ジオングの完成度を80%と評価したのだと説明する。このような解釈は,ものづくりのスタンスに対する熟練工と経営者の相違を伺えているようで,興味深い。
 しかし,各章がクロノジカルに展開されているわけではないので,最終的に,現在の日本が,ガンダムの宇宙世紀ならば,いつの時代なのか,全く明確でない。とりわけ,小沢=シャアの議論に関しては,章半ばにして小沢が(まるで『Zガンダム』のクワトロ大尉の如く)本文から姿をくらまし,40ページ経て,最後にようやく「復活」してくる有様である。20世紀の日本史とガンダムのエピソードの共通点を探るのはおもしろいが,両者を比較することの限界性を認識しつつ,もう少し客観的に議論しなければ,全ての読者を首肯させるのは極めて難しい。



管理人のその他のコンテンツ

知的快楽主義者の学習日記
通信制大学、資格取得、e-ラーニングなど管理人が挑戦した学習の記録です。

知的快楽主義者の備忘録Wiki
日々のITエンジニアとしての仕事や勉強の中で役立った知識をまとめています。

 人気ブログランキングへ  にほんブログ村 哲学・思想ブログへ 

↑ ↑ ブログランキングに登録しています。気に入って下さった方は出口がわりにクリックお願い致します!!

関連記事
スポンサーサイト

theme : 読むこと、学ぶこと、生きること
genre : 本・雑誌

comment

Secret

FC2カウンター
プロフィール

takemaster2009

Author:takemaster2009
FC2ブログへようこそ!

はじめまして。「爽快!読書空間」管理人のtakemasterです。
このブログでは、書評、映画の紹介を中心に皆様に「小さな感動」をお伝えしています。

ご意見・ご感想などございましたら、こちらにメールして下さい。↓↓↓
takemaster@livedoor.com

なお献本の方も大歓迎です!頂いた本は責任をもってご紹介させて頂きます。ご連絡頂きましたら、折り返し送付先等のメールを送らせて頂きます。よろしくお願い致します。

人気ブログランキングへ
にほんブログ村 哲学・思想ブログへ
にほんブログ村

レビュープラス
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
全記事一覧
最新コメント
最新トラックバック
リンク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
スポンサードリンク
あわせて読みたいブログパーツ
twitter
twitter始めました! フォローお願い致します。
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。