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【書評】高津春繁『古典ギリシア』講談社学術文庫

高津氏の覇気に貫かれた筆致が、生気に溢れたギリシャ古典時代の世界を描き出した傑作。全体的に解りやすい説明だが、専門用語や馴染みの無い固有名詞が続出するので、本書を読む前に古代ギリシャについての予備知識があるに越したことは無い。特に著者は比較言語の権威である為に、ギリシャ語とその方言についての論述は圧巻だ。また印欧語族の中でもギリシャ語の表現力の優位性を説いているが、当時の哲学や弁論のために磨き上げられた言葉として、それは当然の結果だったと言える。

生活の項では当時の市井での活気に満ちた日常生活が活写されている。ギリシャ喜劇から引用した高津氏の文章からは、商人の売り込みや料理人たちの意気込みが生き生きと伝わってくるが、それはこの時代の演劇作品にも精通していた著者ならではの描写だ。また市民の陪審員から成り立っていた裁判は、民衆を煽動することのできる弁舌に長けた弁護士が常に勝利していたという事実も興味深い。

一方宇宙の法則性を追究したピタゴラスのように、総ての事象をつまびらかにしなくては気が済まなかった古代ギリシャ人の気質は芸術面でも一切の曖昧さを嫌った。芸術作品は比例や対称の法則に則っていなければならず、敢然として理想化された。それは実利的で現実から遠ざかることの無かったローマ人が、ありのままの姿を好んだことと見事な対照を成している。

ギリシャから多くを学んだローマ人は、著者の言葉を借りれば「生来の田舎物」であった為に、かえって来るべき未来に向けて遠大な計画を立て、自らをその実現に向けて従事させることができた。ギリシャ人はその叡智ゆえに強大な統一国家を築くことをむしろ避け、限定された市民による都市国家の単位に甘んじていた。しかし皮肉にも古代社会において小国家は弱体の謗りを免れなかったことも事実だ。奇しくもアレクサンドロスの出現によってギリシャ文化が国際的な様式に変容する。

アレクサンドロスの大帝国建設は、ひたすら彼の個人的な情熱に端を発したものだが、最終項ヘレニズムでの高津氏の言葉通り「アレクサンドロスはまさに自己崩壊の一歩手前にあったギリシャの自由と独立を奪ったが、その精神と文化を救った」に要約されている。そしてその文化はローマの根底を成すばかりでなく、ひいてはヨーロッパ文化の根源として現代に受け継がれていることが明瞭に理解できる。



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