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【書評】筒井清忠『昭和期日本の構造―二・二六事件とその時代』講談社学術文庫

 2.26事件について、皇道派によるクーデターの成立の技術的可能性があったとする歴史的論考。旧来の皇道派の無計画性、観念性を強調する「丸山」史観に異議を唱えている。丸山は「理念」型による歴史分類の手法によって皇道派の動静を入念に見ることなくファシズムとして切って捨てているのである。この手法は、日本のようなどちらかといえばアモルフな社会にあって「理念」型で見るだけでは見えてこない。原理主義の限界が、そこにある。原理主義は認識の点では一致していても、その方策を酷く長期に採る場合、有効な場合と無効な場合が交錯する。
 
 筒井の分析は云ってみれば当然の批判であって、陸軍の内部での理念の闘争の結果が、2.26事件であって、当時は皇道派、統制派という腑分けは無かったが、皇道派は天皇を中心に北一輝の国家社会主義革命を目指した。が、宮中工作に失敗。皇道派の社会認識は、農村の窮乏状態を目の当たりにした青年将校による「革命」を目指したのである。そのための手段として天皇を社会の一員とする極めてラジカルな北の社会認識に基づいた理論的クーデターであった。だがそれは宮中工作の失敗よって敗北に繋がる。成功していたとしても、その結果は、よい社会が生まれた、とは思えないとも筒井は述べる。
 
 統制派は、その理論たるべき理論はそれほど無いのだが、石原莞爾による「世界最終戦争論」が、総力戦についての愁眉を開くことになる。国際的な「戦争」の状況を見るに付け、1914年にバルカン半島から始まったヨーロッパの戦争、第一次世界大戦は、それ以前の戦争とまったく質的にことなった軍人たちの行う戦争とはことなって、長期に及ぶ消耗戦争であり、陸海軍だけでなく、空軍をも加えた全産業、全社会、全国民を巻き込んだ配給制の下の統制経済と政治も巻き込んだ「総力戦」となったのである。「戦争」の形態が、単なる短期の決戦から長期の経済的軍事的総決戦へと変化したのである。石原の「世界最終戦争論」は、総力戦は経済的にも劣る国では、戦えないという認識を、満州国の建国によって、人口過剰を解消すると共に、消耗戦を戦いながら経済的な活力を持った戦争が可能だとした理論であった。統制国家であれば長期の総力戦も、日本でも戦いうるという戦争論は、統制派軍部官僚を支える共通の理論では無くとも方向性を決定付ける「理論」となったと思われる。
 
 もしそうでないとしたのなら、陸軍大学校を出た者たちは一体どういった「国際」経済と政治認識を持っていたのだろうか?資源も無い国、原油など米国の輸入に頼る経済国家が、何故「経済」も分らない軍部官僚たちによって数年間に及ぶ「総力戦」が敢行できるという能力があるなどと考えることそのものがあまりにもウェバーの説く「官僚」的でさえない。軍部官僚がある程度合理的、国際的な判断を下せると仮定して、官僚的であることからあまりにかけ離れた判断だったといえる。

 ここで一つの仮説を述べる。北の国家社会主義による革命の行方と統制派による統制経済の完了形としての「国家総動員法」による食料、一服などの配給制のあり方を見るとき、その形は全く同一の統制経済へと向かったであろうと言うことである。北の社会観に、社会は個人であるという社会観からその萌芽を見ることが出来る。個人は社会であるときどういった経済制度が出来るかは、配給制の社会であろう。
 皇道派の理論は、軍部官僚の統制経済を先取りしていたのである。



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