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上野霄里 『単細胞的思考』 明窓出版

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 明窓出版株式会社様より、上野霄里・著 『単細胞的思考』 (明窓出版) を献本して頂きました。ありがとうございます。

内容&レビュー: 大作家ヘンリー・ミラーと書簡を交わし、その思想から多くの豊かな智慧を学びとった上野霄里。本書は上野霄里の思想の神髄が凝縮されたハードカバーにして666ページにも及ぶ大著である。上野の探求は、万葉集、古代ギリシャをはじめ、かつての人々がその生の根本に持っていた力強い精神への回帰を促す。そして徹底して現代、そこに生きる私たちの欺瞞を暴き、徹底的な批判のもとにさらす。

 彼が本書で示す生き方とは、権力、肩書き、地位、経済力といった上辺だけの価値観、そして他人に見せる為だけに行われる善行を否定し、真に自己の望む生き方のみを頼りに生きる生き方である。一見すると上野の思想は、キルケゴール、ニーチェにはじまり、20世紀に入りヤスパース、サルトルによって熟成された実存主義・実存哲学の思想と親和性を持つもののように思われる。確かに、伝統的、集団的な権威による真理に背を向け、自己自身による価値創造、つまり自由を求める思想という意味では上野の思想と実存思想には深い親和性がある。

 しかし、上野の思想がかつての実存思想に比べ優れているのは、自由の問題を単に概念上の反抗として留めておくのではなく、日々一瞬一瞬の現実に潜む問題として真摯に捉えている点である。つまり、この本で語られているのは、理論ではなく実践そのものなのである。このことは、本書、特に上野の芸術論、そしてアフォリズムと実存思想家たちのそれを読み比べてみれば明らかであろう。本書の読者は、上野の導きに従いながら、上野の眼差しと重なり、醜悪なものを醜悪と美しいものを美しいと感じる心の襞を刻み込まれる充実感を味わうことになる。

 本書の内容は、時に読者自身の現在の生き方を痛烈に批判するものである。しかし、その批判が痛烈なものであれば、あるほどそれを受け入れた後に残る生の充実感も大きなものであると思われる。なぜなら、上野は究極的には、読者そして全ての人々が自分自身の生き方を実践できると信じており、そこに大きな希望を見出している人物だからである。決して一読をもって、この本の全てを解することは不可能であるが、日々折を見て本書を開き、本書から真に生きるとは如何なることかを学んでいきたいものである。

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theme : 哲学/倫理学
genre : 学問・文化・芸術

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それは分かりますが...

単細胞的思考のすぐれた点は認めますが、ただ、箇所箇所に出てくるあまりのも官能的な表現は蛇足だと思うのですが、その点についてのコメントをお願いいたします。

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