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【書評】鬼木光人 『賢人キケロに訊け!』 (イースト・プレス)

 二千年を越え、現代人の魂を揺さぶる哲学者キケロの言葉。自分との向き合い方、友情、幸福、平和、健康という私たちの直面する問題に直結した言葉の数々に勇気づけられます。

 古代ローマの政治家として活躍し、ストア哲学を代表する哲学者の一人であったマルクス・トゥッリウス・キケロ(紀元前106年~前43年)。本書は、大学で哲学を学び、大手出版社を経た著者が、キケロの著作から厳選した言葉の数々を、著者自身による解説によって現代の私たちの日常生活に、密接に結びつくものとして蘇らせたものです。

 全166頁に、我々の人生の場面に即して、「人生の「壁」にぶつかった時」、「もっと勇気が欲しい時」、「豊かに生きる知恵が欲しい時」、「いつも『希望』と旅をしたい時」という四つの章に分かれ、67個のキケロの言葉が取り上げられています。このように非常にコンパクトな本でありながら、一つ一つの言葉に深い思索が込められており、生活の中で折に触れて、何度も読み返したくなる本です。

 そこで、どの言葉も心に響くものがあるこの本の中で、私が特に惹かれた言葉をいくつかご紹介したいと思います。

 「最も正しい戦争よりも、むしろ最も不正な平和を選ぶ」(50頁)
 ストア派の哲学者として、自分自身への戒めの言葉を数多く遺したキケロですが、その哲学は、自分や身近な他者を越え、国家や人類全体をも見通す視野をもっていたのだと感じさせられる言葉です。そして、20世紀に二度の世界大戦、東西冷戦、21世紀にいたってもアメリカ同時多発テロ以降の血なまぐさい戦争を経た私たちにとっても考えさせられることの多い言葉だと思います。

 不正な平和と聞くと、キケロは腐敗政治をよしとするのかと感じるかもしれませんが、キケロは他の箇所で「平和は静かなる自由だが、隷属はすべての悪の中でも極悪なので、闘いによってというだけでなく、死んでも排撃しなければならない」(82頁)と平和と自由が密接な関係にあることをはっきりと言葉にしています。現実の平和は時に不正なものでありながら、それを自由な私たちが正していく、つまり責任をとるということなのではないかと感じます。

 「強欲を棄て去りたければ、強欲の母である贅沢を棄てろ」(76頁)まさに、ストア派の哲学者らしい自己の欲望に対する態度のとり方ですが、この言葉の次には、「目指すべきは、自分に有益なものと、すべての人々に有益なものとが、同じであるようにすることだ」(78頁)という言葉が紹介されています。他人との不和を避け、質素な生活を保つこと、そして自らの欲するものが、他人に有益であり共有されるようなものであるように考えるキケロの哲学には、18世紀の哲学者カントの「汝の意志の格率が常に同時に普遍的立法の原理として妥当しうるように行為せよ」という道徳哲学へとつながるものを予感させられます。

 そして、キケロの哲学の中で私が最も惹かれたのは、友情についての言葉の数々です。「徳と知恵で厚く守られている人、たとえば自分を信じ、誰の助けも必要としないような人ほど、友情を求め育てることにもずば抜けて優れている」(70頁)、「友人の語る真実が聞けないほど真実を聞く耳を塞がれてしまっている人は、救われる見込みがない」(110頁)友情とは自己の生き方と切り離すことの出来ない存在であり、さらに上辺だけの都合の良い付き合いをする存在ではなく、時には厳しい言葉を与えてくれるかけがえのない存在なのだということが深く伝わってくる言葉です。

 友情のかけがえのなさを端的にあらわした言葉として、「人生から友情を除くことは、世界から太陽を除くことと同じだ」(140頁)、そして「友情はたくさんの美点を持っているが、最大の美点は、希望で未来を照らし、魂がくじけないように支えてくれることだ」(144頁)と言う言葉には、困難な人生に前向きに立ち向かうのに友情がいかに大切かということを改めて感じさせてくれる言葉です。

 ストアと聞くとストイック(禁欲的)という言葉の語源ということもあり、非常に厳しい倫理観を自らに課す生き方のように感じますが、それは同時に自己の存在に対する冷静な認識の上に成り立つものだとも言えます。「自然はひとつの個体であらゆる要素を完璧に仕上げることはしない」(148頁)と言う言葉は、アリストテレスが著書『政治学』の中で、教育の目標を「自然がやり残したことを完成させること」と論じている箇所を連想させますが、この言葉はまさに自分の存在が完璧ではないこと、そして自然がやり残したことを完成させる為に、社会や友情といったものが必要になるのだということをキケロ流に表現した言葉ではないかと感じました。

 最後に、本書の形式は最近大ヒットしたニーチェの言葉を生活の知恵として蘇らせる白取春彦著『超訳 ニーチェの言葉』に通ずる部分も多くありますが、あちらが自己のあり方の「動」の部分を強調するものであるのに対し、こちらは自己のあり方の「静」の部分を強調したものであるような気が私にはしました。そういった意味では両書を読み比べてみるのも楽しいかもしれません。また、本書でストア哲学の考え方に魅力を感じた方には是非、マルクス・アウレリウスの『自省録』もお勧めします。ローマの五賢帝の一人であり、生涯を戦乱の中で生きたマルクス・アウレリウスの哲学には、自らを律する厳しい思想はもちろん、世界平和実現に向けた「世界市民」という思想も登場し、キケロと通ずる部分が非常に多い哲学者です。私も学生時代に、人間関係や自分の生き方について考える際に、お世話になった本です。

関連書籍

 *鬼木光『賢人キケロに訊け!』は、株式会社イースト・プレス様より、献本していただきました。ありがとうございます。

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【書評】 『MacPeopleマックピープル 2011年2月号』 アスキー・メディアワークス

 全てのマックユーザーのための情報誌マックピープルの2011年2月号。表紙を飾るのはグラビア、タレントとして活躍中の安めぐみ。対談を読むと自分とあまり変らない年齢にびっくりしました。

 今回の特集1は、マックのこれからがわかる10の用語を取り上げ詳しく解説した「最新ワード10」。

 取り上げられているのは、近距離ネットワークの新規規格「Bluetooth3.0」、従来のDVDを超える大容量光ディスク「Blue-ray」、デジタル機器同士のネットワークを可能にするアップル独自の規格「DLNA」、1ファイル当たりのサイズ上限64ZB(ゼタバイト、1TBの約10の9乗倍)を実現する新しいファイルシステム「exFAT」、今まで画像処理にのみ用いられてきたGPUをCPUと共に他の演算処理に活用することを可能にする「GPGPU」、ネットワーク情報をケーブル一本で伝送可能にするデジタル家電向け規格「HDMI」、ウェブページ記述言語HTMLの新規格「HTML5」、次世代モバイル通信規格「LTE」、USBのデータ転送速度を従来の10倍以上(5Gbps)に拡張する新規格「USB3.0」、マック上でウィンドウズ等の他OSの使用を可能にする「Boot Camp」などで話題と成っているハードディスク上に仮想的にハードディスクドライブを作成する「VHD」の10ワード。

 普段、処理・やり取りされるデータ量の大容量化に対応すべく登場した拡張規格の説明が、今後マックへ導入される際に起こる事柄も踏まえてなされています。また、用語説明文の中に登場する他の専門用語についても解説が付けられており、普段馴染みの無い規格についても基礎から勉強出来ます。

 特集2は、マックユーザーというとiPhone、iPodとの連携を前提としがちだが、ここではあえて競合他社製品、「Android」、「WALKMAN」を取り上げ、マックとの同期方法、iPhone、iPadとの値段、機能的な比較がされています。自分の用途に合わせた購入の参考になります。

 特集3は、カップル、夫婦、家族での情報共有に焦点をあてiPhone、マックの活用方法を紹介する「Macでラブラブ共有ライフ」。恋人同士で予定の共有などができるSNS「orihime」や子供の撮りたて写真を離れて暮らす親族などに簡単に公開出来る「koukouTV」などの無料サービスは、家族をもつ私としても非常に参考になりました。

 また特別付録として、写真管理・共有ツール「iPhoto'11」の基本設定が理解出来る「MacPeople Basic」、MacOSXとWindows7のインターフェースを徹底比較した「MacとWinインターフェース比較論」が付いています。MacOSXとWindows7搭載マシンのどちらを購入するか検討する際にはもちろん、先ほど登場したVHDを活用し、Windowsをマック上で用いるユーザーにも役立つ情報が満載です。

 今月号は、本誌の常連「iPhone」、「iPod」からあえて離れて、「Android」、「WALKMAN」を取り上げた特集2やカップル、家族でのマック活用法を取り上げた特集3など、ユーザー個々の条件にマッチしたユニークな特集が目立った気がします。

 *『MacPeopleマックピープル 2011年2月号』(アスキー・メディアワークス)はレビュープラス様より、献本して頂きました。いつもありがとうございます。

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