株式会社あさ出版様より、遠藤功『未来のスケッチ―経営で大切なことは旭山動物園にぜんぶある―』(あさ出版)を献本して頂きました。ありがとうございます。
テレビでも大々的に紹介され、奇跡の復活を遂げた北海道旭川市にある旭山動物園。本書は、『現場力』で著名な著者が、経営の観点から旭山動物園の成功を分析した一冊です。
内容: エキノコックス症の風評被害で、来園者数が年間26万人にまで落ち込み、一時は廃園の危機に見舞われた旭山動物園、そんな中当時の菅野園長、そして飼育員たちが描いた14枚のスケッチ(当初は20枚)が復活のきっかけとなっていきます。
スケッチに描かれたのは、動物のありのままの姿、そして凄さを伝えたいという飼育員たちの夢が詰まった動物園の姿です。著者はこのエピソードから、「思い」をスケッチとして具象化することの大切さ、そして園長の「動物の凄さ、美しさ、尊さ」を伝えたいという信念が団子の串となって、大小様々な団子のように個性的な飼育員たちの軸となっていることを指摘しています(第一章)。
ではそのように始まった旭山動物園のスケッチが、年間来園者数300万人の成功へと結びついていったのは何故なのか。そこには後に、「行動展示」という旭山動物園独自の魅力へと育っていく、飼育員一人一人が、自分が担当している動物の凄さを伝えるために取り組んだ「ワンポイントガイド」などの地道な工夫の積み重ね、そしてすべての「動物の命に差はない」という園長の意識革新があります。飼育員一人一人が、自分の動物の良さを伝えたい、そして動物の命を扱っているという原体験を持つことが、強い当事者意識を生み、現場で生まれるアイデアを生かしたボトムアップな経営を実現していきます(第二章)。
そしてレッサーパンダや芸を仕込んだアイドル動物がいない旭山動物園が成功した要因として、動物の種類をあえて絞り、「行動展示」に見られる展示方法の試行錯誤を行う「選択と集中」の実施、山の斜面という不利な環境を「逆転の発想」で高低差を生かした立体展示へと生かしている点が挙げられます(第三章)。
さらに予算不足、人員不足という旭山動物園がおかれた状況が、逆に動物の生態を紹介するパネルの手書き作成をはじめとする「手作り」による現場ノウハウの蓄積、業務の効率化へとつながっていきます。そしてこのような現場の飼育員たちが持つ「信念」は、動物の死を目の当たりにするという「原体験」によって支えられています(第四章)。
このような飼育員たちを育てる土台は、一人一人が自分で選んだ動物の飼育と紹介を担当する「担当制」、そして他の人のノウハウを学ぶ機会である「代番制」、さらに飼育員が持ち回りで発表者をつとめる「勉強会」です。それに加え、他の飼育員への「さりげない手伝い」や「ありがとう」「おはよう」といった当たり前の挨拶が、和気あいあいとした良好な職場環境を作り出しています(第五章)。
マーケティング面では、お客を増やすこと自体を目的とするのではなく、「動物の凄さを伝えること」、そしてその為の工夫を積み重ねることに重点が置かれています。動物の種類ではなく動物一匹の一匹の個としてのファンを増やすこと、顧客不満足を解消する努力を重ねることが、飼育員とお客が一緒になって「価値創造」を行う「共創」へとつながり、その結果が、来園者数の増加として現れます(第六章)。
最後に、2008年以降、爆発的な来園者数の増加が沈静化しつつある現在の旭山動物園が成功が風化しない為には何が必要なのか。著者は14枚のスケッチがまだ四分の一しか実現していないという坂東園長の言葉、そして常に工夫を続ける飼育員達の姿の中に、進歩そして、挑戦を続けることの大切さを見出します。その一方で、「常」あってこその「変」として、「動物のすごさ、美しさ、尊さを伝える」という当初の信念、理念を貫き続けることの大切さが述べられています(第七章)。
レビュー: 廃園寸前だった旭山動物園が、年間来園者数300万人を達成した裏にあった数々の出来事、本書には上述した内容には収まらない経営を考えるで有益な多くのアドバイス、そしてヒントが含まれています。動物の命を扱う重さという原体験に支えられた「動物のすごさ、美しさ、尊さを伝える」という飼育員一人一人の「信念」、そしてそれを強くまとめる園長の求心力、本書は経営者に留まらず、仕事の意義ややりがいについて考える多くの社会人の方に読んで頂きたい本です。
プレゼント・キャンペーン: 本書をアマゾンでご購入頂いた方に朗報です。2010年3月29日(月)~3月31日(水)の期間内に下記URLにて申込むと豪華5大特典がもれなく貰えるキャンペーンを実施中です。どしどしご応募下さい!
URL: http://www.pshonin.com/p/?pc=sgw63h1g97

↑ ↑ ブログランキングに登録しています。気に入って下さった方は出口がわりにクリックお願い致します!!
theme : 本の紹介
genre : 本・雑誌