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百万円と苦虫女

★★★★☆

 フリーターの佐藤鈴子(蒼井優)は、友人とルームシェアをしようと計画していた。しかし、実際に同じ部屋に引っ越してきたのは、その友人の彼氏だけだった。ある日、鈴子は、捨て犬を拾って帰るが、鈴子が外出した隙に、同居人の男は犬を捨ててしまう。かっとなった鈴子は、男の荷物を全て捨てるが、男は荷物の中に百万円が入っていたと警察に通報する。

 前科者となった鈴子は、生まれ故郷をはなれ、各地を転々としながら生活することを選ぶ。そして新しい土地に移る時期は、その場所で百万円をためた時である。

 最初、鈴子が訪れたのは海辺の町。海の家でバイトをする鈴子に、しつこくナンパをしかけるユウキ(竹財輝之助)だったが、鈴子は心を開くことなくこの町を後にする。

 次に、鈴子が訪れるのは山あいの農村。桃農家に住み込みで、桃を収穫する仕事を見つけた鈴子だが、彼女の若さと美しさに目をつけた村の村長から、桃のキャンペーンガールになることを強引に決められそうになる。桃農家の長男春夫(ピエール瀧)の助けで、なんとかそれを断ることができた鈴子だが、その気まずさから村を去ることになる。

 最後に、鈴子が訪れたのはある地方都市。鈴子はスーパーの中にある植物店でバイトをはじめ、そこで大学生中島亮平(森山未來 )と知り合う。最初は、亮平と距離を置こうとする鈴子だが、彼の告白を受け、二人は付き合いはじめる。しかし、次第に亮平は鈴子からお金を借りることが多くなり、鈴子には内緒で植物店のアルバイトの後輩(悠城早矢)と会うことが多くなっていく。ついに、鈴子は亮平に別れを切り出すが…

 本当は優しい心を持ちながら、どこか生き方が不器用で、他人との距離のとり方が下手などこにでもいる20歳の女の子を、蒼井優が見事に演じきっています。こういう時代って誰にでも少なからずありますよね。

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genre : 映画

ジャンパー (原題:Jumper)

★★★★★

 主人公デビィット・ライス(ヘイデン・クリステンセン)は、少年時代氷の張った川に落ち、溺れかけた際、空間を瞬間移動するジャンプ能力に目覚め窮地を脱する。

 数年後、ジャンプ能力によって銀行の金庫からお金を奪い、裕福な生活を送るようになったデヴィットは、少年時代に好意を持っていたミリー・ハリーズ(レイチェル・ビルソン)の前に姿を現わす。共に過ごせなかった年月を埋めるかのように愛し合う二人だったが、ある日ジャンパー(ジャンプ能力の持主)の抹殺を目指す組織「パラディン」が現れ、デビィットの命を狙うようになる。

 パラディンに親を殺されパラディンへの復讐に生きるジャンパー、グリフィン・オコナー(ジェイミー・ベル)の協力もあり、パラディンとそのリーダー、ローランド・コックス(サミュエル・L・ジャクソン)との死闘に一応の勝利をおさめるデビィットだが、彼の前に現れたパラディンの最高指導者は意外な人物であった。

 自分の目で見た場所であれば(写真であってもよい)どこにでも瞬間移動できるジャンプ能力。この映画を見ていると自分にもこんな能力があったらなぁと思ってしまいます。昔、運転免許をとって、車で自由に、自分の思った場所にいけるようになると世界がすごく広がった気がしましたが、ジャンプ能力を使えばどんな国にでも一瞬で移動出来てさらに世界が広がるんだろうと妄想してしまいました。(笑)

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genre : 映画

伊坂幸太郎 『終末のフール』 集英社文庫

★★★★★

 あと3年で、小惑星が地球に衝突する。8年前に小惑星衝突の発表があってから5年たち、絶望的なパニック状態を脱した人々を描いた短編集。

 息子の自殺によって、父親と娘の間に生じた消えない溝と確執「終末のフール」。、身籠った妻を前に、子供を産むべきか否か悩む夫「太陽のシール」。妹と母が自殺する原因を作ったアナウンサーの殺害を計画した兄弟「籠城のビール」。父親の遺した数千冊の蔵書を読み終え、恋人を探す旅に出る女「冬眠のガール」。キックボクシングに情熱を傾ける男たち「鋼鉄のウール」。自らの不注意で妻を失い自殺を決意した男と天文オタク「天体のヨール」。恋人、孫、母親を演じ続ける女「演劇のオール」。宗教団体方舟とひきこもりの夫婦「深海のボール」。

 8編の短編小説は、どれも人生の中で起こりうる一場面を描いていながら、全ての人間があと3年で死ぬという状況が、彼らの思考を、そして物語を加速している。全ての人間が死ぬという意味では、現実の私たちも彼らと変わらない。違うのはその時期が前もって知られているのか、否かという点だけである。この作品では人間の死をあと3年という制限のもとで登場人物たちに考えさせ、行動させることで、彼らの真の姿が生き生きと伝わってくる作品に仕上がったのではないでしょうか。しかし、その一方で著者は、たとえあと少しで死ぬとしても変わらない人間の姿を描こうとしているのかもしれません。

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genre : 小説・文学

石田衣良 『Gボーイズ冬戦争 池袋ウエストゲートパークⅦ』 文春文庫

★★★★★

 IWGPシリーズの第7弾。毎年一回のペースで出版される本シリーズ、登場人物達も一つずつ歳を重ねていく。今回は、ついにマコトが映画デビューする?しかし、その裏でマコトを付け狙う謎の男、裏の世界の始末屋「影」、そしてGボーイズキングのタカシ打倒を目指してナンバー2のヒロトが反乱を起こす。(表題作「Gボーイズ冬戦争」)

 表題作以外には、オレオレ詐欺から、足を洗おうとして戦う男をマコトがサポートする「要町テレフォンマン」。悪徳絵画店のコンパニオンに恋し、不当に高価な絵画を買った男がとった行動とは「詐欺師のヴィーナス」。自宅に放火した13歳の少年と池袋で起こった連続放火事件の意外な顛末「バーン・ダウン・ザ・ハウス」の3作品が収録されている。

 自分を変えようと戦う人々、そして時を経ても変わらないもの。そんなものを感じさせる作品が多かったです。次回作にも期待大です。

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genre : 小説・文学

バーン・アフター・リーディング (原題:Burn After Reading)

★★★★★

 『ファーゴ』などで知られるコーエン兄弟監督によるブラック・コメディ映画。アルコール問題でCIAの分析官をクビになったオズボーン・コックス(ジョン・マルコヴィッチ)、不倫を繰り返す財務省の連邦保安官ハリー(ジョージ・クルーニー)、ハリーと不倫中のオズボーンの妻ケイティ(ティルダ・スウィントン)、全身整形を目指すスポーツクラブ従業員リンダ・リツキ(フランシス・マクドーマンド)、リンダの同僚チャド(ブラッド・ピット)、東方正教教会の司祭だった過去をもつスポーツクラブのオーナー。

 この当初、あまりお互いに関係のない人物達が、物語が進行するにつれ複雑に絡まり合っていきます。この物語の一番面白いところは、この複雑な関係が生み出す登場人物達のすれ違いだ思います。その最も極端なものが「不条理な死」ではないでしょうか。物語の途中、オズボーン宅に潜入したブラピは、逢引き途中のハリーと鉢合わせになり、なぜか銃の暴発によって死亡し、スポーツクラブのオーナーはオズボーンに妻の不倫相手と勘違いされて殺されてしまいます。

 私はこの作品を観ているうちに、ふとボリス・ヴィアンカミュの不条理小説を読んでいるような気分になりました。そして、物語のラスト登場人物達が起こした奇妙な事件を監視してきたCIAの上司と分析官のやりとりが、また面白いです。「この事件の教訓はなんだろうか。」と問う上司に対し、「複雑すぎて何がなんだか。」と答える分析官。このやりとりは、作品全体の要約のようにも感じられるが、そこにはもうひとつブラックな笑いが潜んでいます。物語の冒頭この分析官が着任したせいで、オズボーンがクビになったことを考えると、ひょっとするとこの事件の発端は、この分析官の登場なのかもしれません。以上は私の深読みかもしれませんが、とにかくこの作品には近年まれにみる深くてブラックな笑いの世界が広がっています。

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ドラゴンボール・エボリューション(原題:Dragonball Evolution)

★★★☆☆

 鳥山明の大人気漫画「ドラゴンボール」をハリウッドで完全実写化。ハイスクールに通う悟空(ジャスティン・チャットウィン)は、祖父悟飯(ランダル・ダク・キム)と共に暮らし、武術の稽古をする日々を送っている。しかし、ある日かつて封印されたピッコロ大魔王(ジェームズ・マースターズ)が復活し、悟飯は倒されてしまう。悟空は、ドラゴンボールを捜すブルマ(エミー・ロッサム)と共に、武天老師(チョウ・ユンファ)を訪ね奥儀である「かめはめ波」を習得する。その過程でハイスクールの同級生であるチチ(ジェイミー・チャン)との距離も縮まっていく。

 感想としては、二時間半程度の時間で、悟空がピッコロを倒すまでを描こうとしている為、若干ストーリー的に無理な部分が多かった気がします。また実写化とはいっても、受け継いでいるのはモチーフ程度の為、原作ファンの方にはあまりお勧め出来ないかもしれません。あくまでも似たような話、パラレルワールドとして見た方が楽しめると思います。

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マンマ・ミーア! (原題:Mamma Mia!)

★★★★★

 エーゲ海に浮かぶある島を舞台に、繰り広げられるドンチャン騒ぎミュージカル。島のホテルを経営するシングルマザー、ドナ(メリル・ストリープ)の一人娘ソフィ(アマンダ・セイフリード)は、婚約者スカイとの結婚式に、父親の可能性がある3人の男性を招待する。

 結婚式前日、島に現れたのは、アメリカ人の建築家サム(ピアース・ブロスナン)、イギリス人の銀行家ハリー(コリン・ファース)、スウェーデン人の作詞家ビル(ステラン・スカルスガルド)の三人だった。本当の父親は誰なのか。父親候補の3人とドナ、そしてドナの友人ロージー、ターニャを巻き込んで波乱のストーリーが展開する。

 本作でアレンジされている楽曲は、すべてポップ音楽グループABBAの曲を用いており、コミカルで、リズミカルな曲調がこの映画のイメージとぴったり一致しています。

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『ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー』

★★★★★

 題名の通り、人気ゲームシリーズ『ストリートファイター』の登場人物チュンリーの活躍を描いた作品。チュンリー(クリスティン・クルック)は、裕福な家庭で育ち、その中でピアノの才能を開花させ、父からはカンフーを教わる日々を過ごしていた。だがある夜、チュンリーの父が持つ人脈を自分の勢力拡大に利用したいと考えていたベガ(ニール・マクドノー)とその部下バイソン(マイケル・クラーク・ダンカン)によって、父は連れ去られてしまう。

 ある日、成長しピアニストとして活躍しているチュンリーのもとに古い中国語で書かれた巻物が届けられる。その隠されたメッセージを発見したチュンリーは父の行方を捜しに、単身バンコクへと赴く。ゲン(ロビン・ショウ)から武術の手ほどきを受けながら、次第に父をさらったベガへの手がかりをつかんでいくチュンリーだが…

 チュンリーに焦点を当てたこの作品は、ストーリー、アクションともに演出としては面白かったです。ただ、ベガが常に背広だったり、バイソン、バルログといった主要な敵があまりにも弱すぎて、少し拍子抜けする場面も多かったです。限られた時間の中でストーリーを完結させる為に仕方がなかったのかもしれませんが、もう少し苦戦してもいい気がします。

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ベッドタイム・ストーリー

★★★★★

 小さなモーテルのオーナーであるマーティ・ブロンソンは、毎晩息子のスキーターに自作のおとぎ話を聞かせるよき父親であったが、モーテルの経営に行き詰まる。そして、友人のバリー・ノッティンガム(リチャード・グリフィス)に「スキーターが大きくなったらホテルの経営を任せる」という約束のもとに、ホテルを売却する。

 月日は流れ、バリーのホテルが大成功を収める中、成長したスキーター(アダム・サンドラー)はホテルの従業員として、電気修理の仕事をしている。バリーはさらなる成功の為、ホテルの移転を発表するが、その責任者として選ばれたのはスキーターではなく、バリーの娘バイオレット(テリーサ・パーマー)の恋人、おべっか使いのケンドル(ガイ・ピアース)だった。

 現実に失望するスキーターだが、姉から甥のパトリックと姪のポビーを、夜間クラスに通うジル(ケリー・ラッセル)と交替で、一週間預かることを依頼される。夜毎、二人におとぎ話を作って聞かせるスキーターだが、なんとそのお話の展開と同じ事が、現実に起こりはじめる…

 この映画は、奇跡を描きながらも、それはあくまでもきっかけに過ぎず、最後は主人公が自分自身の力で現実に立ち向かい、自分の夢と恋を実現する物語として描かれており、家族で安心して見れるハッピーエンド物語であると同時に観客を勇気づけてくれる部分も多い作品でした。

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genre : 映画

竹田青嗣 『現象学は〈思考の原理〉である』 ちくま新書

★★★★☆

 フッサール現象学を、近代哲学の観念論の方法の限界と意義をとことん探究し、一つの原理的な思考法へと高めたものとして捉える著者による現象学論。以下、全体を要約してみると「Ⅰ「思考の原理」としての現象学」では、これまでの現象学者による「現象学的還元」の説明が不十分であったこと指摘し、現象学的還元とは、客観的な世界視線をいったんカッコにいれ、内省によって一つ一つの知覚に伴う意識構造の中から、誰にとっても共通の枠組みを取り出すものとして捉える。この共通の枠組みとは、我々の世界に対する信憑の構造であり、「信念対立」を克服する上で不可欠な原理である。

「Ⅱ時代閉塞を乗り越える原理―現象学の射程」各人の自由を土台とした市民社会、近代国家が抱えた矛盾「貧富の格差」、「資本家と労働者の階層対立」を克服する為にマルクス主義が登場する。しかし、政治的根拠を、全ての人々の意思を代表する「一般意志」にはなく、万人の平等という「理想理念」におき、一党独裁へと至るマルクス主義の考え方は、むしろ前近代的な政治原理にしかなりえなかった。マルクス主義に代わる思想として登場した構造主義からポスト構造主義に至るポストモダン思想は、あらゆる価値を相対化する事で、自由を求める知識層に満足を与えるが、合意を形成する原理論としては成功していない。万人が共有する信憑構造の分析を土台におく現象学こそ、イデオロギー対立克服の原理となりうる。

「Ⅲ 言語の現象学」では、ラッセル、フレーゲ、ヴィトゲンシュタインに見られる言語哲学では、言語行為が伴う多義性が説明できないという批判がなされる。著者によれば、日常的な言語「現実言語」では、発語者と受語者の暗黙の関係が前提とされている。それに対し言語哲学が扱う言語とは、このような暗黙の関係が抜き取られている「一般言語表象」であり、そこでは様々なパラドックスが発生し、言語の多義性の問題を説明することが出来ない。現象学は、言語の企投的な意味を解明することによって言語についての分析を可能にする。

「Ⅳ 「欲望論」原論」では、社会の原理論として、著者による現象学的手法に基づく欲望論が展開されている。

 感想としては、本書で行われている、他の現象学者、マルクス主義、ポストモダン思想、言語哲学に対する批判には、的外れではないかと感じる部分もありました。しかし、現象学を思考の原理として捉え、現実問題の解決を探る方法論として模索する著者の姿勢には、「今日、哲学をする意味はあるのか」ということに対する一つの答えがあるような気がします。竹田さんは、時にフッサール自身さえ現象学の意味を誤解していると述べ、自分自身の考えによって、現象学が言わんとすることを説明していますが、こういった姿勢は、行き過ぎや誤解によるものではなく、哲学書を丹念に読み込んでいく上で、当然おきてくるものだと思います。

 本書は、フッサールの現象学を丹念に読み解いた著者による現象学試論としてお勧めの一冊です。

theme : 哲学/倫理学
genre : 学問・文化・芸術

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