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プラトン 『メノン』 岩波文庫

★★★★★
 「徳は教えうるか?」、プラトンの対話編の中でも、彼のイデア論と観想ついての考えが、最も簡潔に論じられている一冊です。しかし、この本は同時に、善や悪について論じることが、いかに難しいかを私たちに考えさせてくれます。
 「なぜ人を殺していはいけないのか?」といった問いに、明確で、自明な答えを出すことのできない場合、一体私たちは何を根拠とすることが出来るのか。
 プラトンの大きな功績は、イデアという解答を提示したことにあるのではなく、このような一見自明な事柄の中に、実は大きな問いが含まれているという事を発見したことにあると言えるでしょう。
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theme : 哲学/倫理学
genre : 学問・文化・芸術

大平健 『豊かさの精神病理』 岩波書店

★★★☆☆
 精神科医の著者が、消費社会を論じた大変興味深い一冊です。モノを媒介として人との関係を築き、コミュニケーションを取ろうとする〈モノ語り〉の人びと。その姿は、感情や信頼といったものの曖昧さを排除した、ある意味では、大変合理的な人々であると言えるでしょう。しかし、モノを手に入れ、身につける事への依存と人間関係の構築を、同じものとして錯覚している点に、最大の病理があります。
 この本に取り上げられている事例は、いささか極端ではありますが、それだけに現代に生きる私たちの誰もが、大なり小なり抱えている病を、象徴的に描いているとも言えるのではないでしょうか。

theme : 本の紹介
genre : 小説・文学

トルストイ 『クロイツェル・ソナタ,悪魔』 新潮文庫

★★★☆☆
 妻を殺した男が、その経緯を語る告白という形をとって、人間の嫉妬深さ、男女の愛の猥雑さを描こうとした作品です。俗世的な恋愛を離れ、キリスト教信仰の道のみを唯一のものとして考える本作品は、トルストイの後期思想を代表するものといえるでしょう。性的欲望を悪や不幸の起源として考える立場が、「クロイツェル・ソナタ」、「悪魔」両作品の全体にわたって貫かれています。

theme : 本の紹介
genre : 小説・文学

宮本輝 『錦繍』 新潮文庫

★★★★☆
 夫の不可解な心中未遂事件の為に、離婚し、お互いに全く違う人生を歩んでいた二人が、ある日突然の再会を果たす。この小説はその後に二人の間で交わされた往復書簡という形で、人生の測りがたさ、愛とは何かを描こうとしています。あえて書簡体小説という形式を選ぶことで、すれちがってきた過去の時間の長さや二人の思いが、一層奥行きをもったものとして伝わってくるのではないでしょうか。

theme : 本の紹介
genre : 小説・文学

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