★★★★☆ カミュの『異邦人』は、同時代のサルトルをはじめ、バルトやポスト・コロニアリズムのサイードなど、多くの人々に、様々な観点から論じられてきた作品であり、それだけに魅力的な作品と言えるでしょう。しかし、この本はそういった思想史的文脈からではなく、自由と人生を楽しむ一人の青年ムルソーの立場に立って、この作品を捉えようとする試みであり、大変、自由で斬新な解釈が、親しみやすい形でなされています。
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カミュ 『異邦人』 新潮文庫
★★★★★
カミュの代表作『異邦人』は、乾いた文体と「太陽のせい」で人を殺したというショッキングなイメージによって、現代フランス文学を代表する作品と言えるでしょう。単に文学作品として捉えることも出来ますが、この作品には、カミュの不条理の哲学が、存分に発揮されています。それ故に、主人公ムルソーは「異邦人」でありながら、私たちにとってどこか身近な存在として、感じられるのではないでしょうか。
カミュの代表作『異邦人』は、乾いた文体と「太陽のせい」で人を殺したというショッキングなイメージによって、現代フランス文学を代表する作品と言えるでしょう。単に文学作品として捉えることも出来ますが、この作品には、カミュの不条理の哲学が、存分に発揮されています。それ故に、主人公ムルソーは「異邦人」でありながら、私たちにとってどこか身近な存在として、感じられるのではないでしょうか。
マイケル・S. ガザニガ 『脳のなかの倫理―脳倫理学序説』 紀伊國屋書店
★★★★☆
脳科学の発展によって、発生してきた様々な倫理的、道徳的な問題について、脳神経科学者である著者が、脳神経科学の視点から論じています。
脳の強化をめぐる問題、心と脳は同じものなのかといった問題は、優生学や自由意志などをめぐる問題と密接に関わっており、この本の議論はまさに、現代社会が倫理的に抱える問題の縮図と言えるのではないでしょうか。
脳科学の発展によって、発生してきた様々な倫理的、道徳的な問題について、脳神経科学者である著者が、脳神経科学の視点から論じています。
脳の強化をめぐる問題、心と脳は同じものなのかといった問題は、優生学や自由意志などをめぐる問題と密接に関わっており、この本の議論はまさに、現代社会が倫理的に抱える問題の縮図と言えるのではないでしょうか。
アンソニーギデンズ 『暴走する世界―グローバリゼーションは何をどう変えるのか』 ダイヤモンド社
★★★★☆
イギリスの社会学者、アンソニー ギデンズがグローバル社会における、リスク、伝統、家族、民主主義について、自らが『第三の道』において提示した思想に基づいて議論しています。
政府の政策的な硬直化、競争中心の企業が持つ無制約性に対して、伝統や家族、地域共同体の再構成と福祉国家の重要性を主張しています。
いわゆる社会民主主義の立場からの、グローバリゼーション論と言えます。
イギリスの社会学者、アンソニー ギデンズがグローバル社会における、リスク、伝統、家族、民主主義について、自らが『第三の道』において提示した思想に基づいて議論しています。
政府の政策的な硬直化、競争中心の企業が持つ無制約性に対して、伝統や家族、地域共同体の再構成と福祉国家の重要性を主張しています。
いわゆる社会民主主義の立場からの、グローバリゼーション論と言えます。
須原 一秀 『〈現代の全体〉をとらえる一番大きくて簡単な枠組』 新評論社
★★★★★ 分析哲学を専門とする著者が、現代哲学の限界を論じ、今後の社会における効果的な問題解決のプロセスとは何なのかについて論じています。
そのプロセスは、一元的規準によって様々な問題解決を目指すのではなく、多元的、個別的解決を目指すものと言えるでしょう。私には、ハバーマスの公共圏議論とアンチ・オイディプス的欲望論の融合を図ったものと感じられました。
そのプロセスは、一元的規準によって様々な問題解決を目指すのではなく、多元的、個別的解決を目指すものと言えるでしょう。私には、ハバーマスの公共圏議論とアンチ・オイディプス的欲望論の融合を図ったものと感じられました。
竹田青嗣 西研 『よみがえれ、哲学』 NHK出版
★★★★★
現象学、分析哲学、ポストモダンなどの現代哲学の発展を論じながら、竹田青嗣、西研が今日の社会における哲学の意義について熱く語っています。
今日の市場経済における自由な競争と教育、福祉などの社会基盤の整備という二つの問題が、互いに対して持つ矛盾をどう解消するかについて、考えるにあたって、全体主義、マルクス主義との対決を通して鍛えられてきた、現代哲学が果たす役割は大きいと考えられます。
現象学、分析哲学、ポストモダンなどの現代哲学の発展を論じながら、竹田青嗣、西研が今日の社会における哲学の意義について熱く語っています。
今日の市場経済における自由な競争と教育、福祉などの社会基盤の整備という二つの問題が、互いに対して持つ矛盾をどう解消するかについて、考えるにあたって、全体主義、マルクス主義との対決を通して鍛えられてきた、現代哲学が果たす役割は大きいと考えられます。
西研 『ヘーゲル・大人のなりかた』 日本放送出版協会
★★★★☆ ヘーゲルの主著『精神現象学』を中心に、ヘーゲル哲学における弁証法的歴史観とは何だったのかが、平易に解説されています。
ヘーゲルにとって歴史とは、王制から貴族制、民主制へと、前の政治体制の矛盾を乗り越え、より多くの人々が自由を獲得するプロセスであったと言えるでしょう。
副題が「大人のなりかた」となっている理由が、また面白いです。
ヘーゲルにとって歴史とは、王制から貴族制、民主制へと、前の政治体制の矛盾を乗り越え、より多くの人々が自由を獲得するプロセスであったと言えるでしょう。
副題が「大人のなりかた」となっている理由が、また面白いです。
木田元 『ハイデガーの思想』 岩波新書
★★★★☆ フランス実存思想、構造主義、ポスト構造主義に大きな影響を与えた、20世紀最大の哲学者マルティン・ハイデガー。その哲学について、主著『存在と時間』を中心に解説しています。
その意義は、デカルト以降の近代二元論の登場によって、認識論中心に展開されてきた哲学を、改めて存在そのものの意味への問いへと引き戻した、「存在論的転換」にあったといえます。
その意義は、デカルト以降の近代二元論の登場によって、認識論中心に展開されてきた哲学を、改めて存在そのものの意味への問いへと引き戻した、「存在論的転換」にあったといえます。
木田元 『ハイデガー『存在と時間』の構築』 岩波現代文庫
★★★★☆ ハイデガーの主著『存在と時間』は、その後の多くの思想に影響を与えたものの、第一部、第二部のうち第一部のみが刊行された未完の書です。この本はその未完部分を、ハイデガーの講義録などを参考にしながら、再構築しようという、大変面白い本です。
一流のハイデガー研究者である木田元だからこそ出来る試みだと感じました。
一流のハイデガー研究者である木田元だからこそ出来る試みだと感じました。
井上靖 『あすなろ物語』 新潮文庫
★★★★☆ 人間としての完成された姿を“檜”に例え、永遠に檜になれない“あすなろの木”として自らを捉える主人公鮎太。最初は“あすなろ”という言葉が未熟さのあらわれのように捉えられているが、主人公が成長するにつれ“あすなろ”であるということが、自由な可能性に開かれた人間の姿として捉えなおされていく。井上靖自身の人生観を描いた教養小説です。